2025年に読んでよかった本の話

今年もたくさんの本に助けてもらったなあ。順不同、発行年問わずでわたしが2025年に読んで「良かった〜」という本から10冊(絞りに絞って)。
青山ゆみこ 2025.12.29
読者限定

こんにちは。
今年もあと二日ちょいですよっっ(汗が吹き出る)。

予定通り大掃除もせず、予定外に小掃除までせず、年内押し迫ってしまった青山です。
ま、えっか。

鏡餅は思い切って小さいのを買ってみると、いつもの三宝にのせたら、なんかもうブッカブカのだっぼだぼの制服を着た中学一年生みたいになってます。
ま、えっか。

すべてを「ま、えっか」の呪文で軽やかに受け流し、考えてみたら、そういえばわたしはこういう人間になりたかったんです。小さいことを気にしない人間に。

「ゲンナイ会」や「話を聞きます」をはじめ、今年もたくさんの人からいろんなお話を聞いたせいでしょうか。自分も聞いてもらえたおかげでしょうか。

よく「年を取ると小さなことがどうでもよくなる」と聞きますが、あれって「加齢」というより、「自分の体験+人の体験」を自分のなかに増やして満たしていくことで、心が熟成するからなんじゃないかな。

たくさんの脈絡のない素材で煮込まれた鍋のように、もうなに味かわからない鍋でも、それなりに、まあ、味わうことができる。そういう人に私はなりたい(みつを)。

わたしの鍋に入ってぐつぐつ煮込まれるのは、実際に見聞きした話に限りません。やっぱ「本」もある。本から届いてきたたくさんの人の声が、わたしの一部になっている。だから、「ま、えっか」なんて言えることが増えている。
そんなわけで「2025年に読んでよかった本」から「10冊に絞ったとしたら……」という話を今日のレターではお届けしたいと思います。

今年読んでよかった本

(順不同、発行年問わずで、単純にわたしが2025年に読んだ本。小説はのぞく)

🔵植本一子『それはただの偶然』
日記ZINEやトラウマ治療の記録本など、好きな書き手として、どこか勝手に「見守る」ように読んできた一子さんの、いわば初のエッセイ集。

「大きな事件に巻きこまれた」ということや人との別れなど、胸が痛む出来事も描かれているし、言葉にできないような思いも伝わってくるけれど、一子さんのピュアで透明感のある語りが読み手のわたしを重たくさせすぎなくて、読後感はすがすがしい。いつもそばに素敵な人たちがいる。一子さんが素敵な人だからだと思う。

🔵齋藤美衣『やっと言えた』(医学書院)
昨年のマイベストでは『庭に埋めたものは掘り起こさなければならない』を挙げた齋藤さんの、続編というより、アナザーストーリーというか(うまく言えない)。

生死にかかわってくる自分の「なぜ?」をどうにかしたくて、カウンセリングルームの扉を開いた彼女が、カウンセラーさんとひたすらやり取りを続けていく記録文学。深い心の傷からの回復は、わかりやすく進まない。もう本当に圧倒されるような展開が起きたり、なにも起きなかったり……。
読む人によっては、フラッシュバックが起きるかもしれないと思う(でもそのあたりはこれ以上なく配慮して書かれているように思う)。
わたし自身が感じたものは、「人は回復できるんだ」という希望と、心のあちこちが修復されたようなカタルシス。真摯な筆に感謝したい。

🔵小指『宇宙人の部屋』(ROADSIDERS)
 ギャンブル依存症の当事者であり支援者である田中紀子さんがSNSで投稿しているのが気になっていたら、神戸「本の栞」さんで扱っているのを知って、小走りで買いに行った本。

「小指」という不思議な筆名も初めて知り、付き合う人がすべてアル中という衝撃の一文からも、当初は「きっと奇天烈な人なのだろう」だろうと貧しい思い込みを抱いていたが、本を読むと繊細であまりにうつくしい文章と、内省的なのにじっとりした重さがない言葉の断片にいっぺんにファンになってしまった。その後、会いたすぎてインタビューを申し込んだ。めっちゃかわゆい、最高におもしろい人だった。画家としてもすごくて(語彙力)、天才と思う(とことん語彙力)。

🔵朴紗羅『ヘルシンキ生活の練習』(ちくま文庫)
単行本発売後、話題になっていたが、「生活の練習ってなにそれ?」「みんなしてるんちゃうん?」などと実にわたしらしい薄っぺらい捉え方をしてしまい、未読だった。

神戸・新長田の「本屋ロカンタン」さんで目があって、「どうしても今読まねばならない」とびびびときて読んだら、まじで目からうろこが1800枚ほど落ちた。
北欧の生活を知るのも面白いが、自分の思い込みを解き放つという体験を読み手にもさせてくれる希有な一冊。続編もロカンタンさんで買って読んだ。めちゃくちゃよかったっす。

🔵平川克美『三歩あるけば、旅の空』(灯光舎) 
「ふと、湯船が恋しくなる湯けむり紀行」とサブタイトルにあり、紛争、内乱、日本だってもはや戦時下では?と思うようなこのご時世に「のんきすぎでは?」なんて思った自分のつまらなさに呆れた。読めば読むほど、自分のなんてことない日常こそ大事で、これこそ、今わたしの求めているものだわと泣きそうになった。

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