学びはいつでも始まる

後期の授業が始まった大学での講師業の第一週(週に2日、3コマ)。驚くことがあったりで、そのご報告のようなもの。後半からはサポートメンバー限定公開のレターです。
青山ゆみこ 2025.10.06
サポートメンバー限定

先週から、神戸松蔭大学にて、2025年度後期の授業の出講が無事始まりました。
始まったのは無事だけど、いやはや、想像以上に必死のぱっちです。

授業そのものは一瞬というか、90分経てば必ず終わる。時間は必ず経過する。実にシンプルです。

授業以外のことであれこれテンパっています。本当に細々したことなんだけど。慣れもあるんだろうなあ。
どんな仕事もそうだろうけど、回り出す前の、起動に乗る前の試行錯誤がある。いまはきっと段階なんだろうと思っています。


ちょこっと授業準備について。

例えば本に絡んだトークイベントなんだかと、話し相手がいる場合はほぼ準備なしのわたしですが、ひとりで90分とか話をする講演仕事は、結構念入りに用意をします。

頭が真っ白になっても、手元のメモ(授業レジュメ)に誘導してもらえるように。スライドで15枚くらい用意するんだけど、授業で実際に使うのは半分ほどでしょうか。

例えば料理でいうと。ビーフカレーをつくるときは、肉や玉ねぎなどの野菜という材料を用意して、それぞれ下ごしらえしておく。ここまではごく普通に行う。

ただ、「なにかあった場合(なにかはわからない)」のために、例えばターメリックが切れてた!とかなったら、赤ワイン煮込みに変更できるように、料理用の赤ワインも用意しておく(使わないかもしれないけど)。とにかくなんとかできるように。

そんでもって、カレーの場合はお米を炊くけど、赤ワイン煮込みならパンが合うかもしれないから、バケットも用意しておこう。そんなふうに準備していたら、流れでカレーも赤ワイン煮込みも食べたいと言ってくれる人がいて、両方つくることになったり。

時には、急に人数が増えてそれでも足りないってことだって。じゃあ、余ったパンで、デザート代わりにフレンチトーストをつくれるように、卵と牛乳も用意しておこう。

でも、普通にビーフカレーを出して、終わり。よかった、よかった。ほかの食材は、また明日使おう。

なんて感じに、「どうなるのかわからない」ので、準備する材料がどんどん増えるというわけなんです。

なぜだろうと考えてみたら、みんなが食べたいものがそのときにならないとわからないからのように思う。レストランだとあらかじめ予告して、食べる側もその胃と気分を用意して「さあ、こい」って期待するんだけど、授業はそうはいかない。そもそもわたしが予定通り料理を出さないわけで……。

うまく伝えられた気がしないのですが、つまり、やっぱりしばらくは試行錯誤だな、というわけです。繰り返し、どんな仕事もそうだと思うのですが。

今週は授業の第二週なので、ごはんを食べに来てくれる人の顔は、もうなんとなくわかっているという安心感もあります。
「文章には宛先がある」という内田樹先生の言葉を考える授業もあるのですが、講義にも必ずやっぱり「メッセージの宛先」があって、メッセージをやり取りする関係性のなかで、必然的にいろんなことが自然と決まってくるのだろうなあ。

なりゆきでいこう。

そう思えるためには、わたしの場合は、なりゆきでどんな料理も出せるように準備しておかないと、なりゆけない(またここに戻ってきた)。

というわけで、これから毎週このレターをお届けできるのかしらと早速不安を感じています。どきどき。

もしかするとお休み回が増えるかもしれません。そうなったら、とくに執筆の支援をしてくださってる方には、遠慮なくサポートサブスクを停止してください。サブスクの登録を解除しても、わたしに通知が来るとかはないので、わからないと思います。だから、本当にどうぞどうぞ気にせずに。

レターもそんなふうになりゆきになってしまい、恐縮です。ゆるっとお見守りください。

ここで幕間的に少しお知らせです。
細川貂々さんとの共著『相談するってむずかしい』(集英社)に、校正者の牟田都子さんと、装丁家の矢萩多聞さんが、お二人それぞれらしさがいっぱいの、あたたかく知見に満ちた書評を寄せてくださいました。お二人が想起されて書いてくださったエピソードもまるで異なって、そこもおもしろく、とっても読み応えがあります。ぜひご一読ください。

さて、以下はサポートメンバー限定でお読みいただけたらと思います。大学の授業が始まってみたら、驚いたこと、今年度から変わったことがあり、そのことから感じた話。励まされたようなこと。

六甲山の中腹にあるキャンパスからの眺望

六甲山の中腹にあるキャンパスからの眺望

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