NHKスペシャルで震撼した「オンラインカジノ “人間操作”の正体」。仕組まれて「ギャンブル依存症にさせられる」

スマホから気軽にアクセスしてギャンブル依存症になってしまう若者が増えているオンカジ問題。4月20日放送のNHKスペシャル「オンラインカジノ “人間操作”の正体」で知った「依存症にさせられる仕組み(デザイン)」が衝撃すぎて。
青山ゆみこ 2025.04.21
誰でも

普段は20時を過ぎたら酷使しすぎの眼を休めるべく(浮遊性めまいもあるし)、テレビから離れるようにしているここ数年。NHKスペシャルなどの特番も、基本は録画視聴して後からゆっくり見る派のわたしです。

ですが、昨夜のNHKスペシャルはどうしても気になって見始めたら、胸がざわざわして、胃がひくひく、さらには全身硬直しそうに恐ろしい気分になって、気づけば一瞬で見終わっていました。

まだ今朝も動揺しているくらい、怖かった。他人事じゃないというか、これは知らなかったら本当にヤバいという切迫感しか感じませんでした。
見逃しや配信や再放送があるので、ぜひひとりでも多くの人に見てほしい。
いてもたってもいられず今回のレターというか、「見てください」というお願いをこうして書いているという次第です。

==番組公式snsより==
多額の借金や依存状態に苦しむ若者が急増しています。家を失い、仕事を失い、家族を失い、命まで奪う。 そのアルゴリズムと運営実態とは

<b>写真はNHKスペシャル「オンラインカジノ “人間操作”の正体」から</b>(放送日を加工して消しています)【NHKプラス見逃】(配信 27(日)まで)、【再放送】NHK総合にて4/24(木)午前0時35分(水曜深夜)

写真はNHKスペシャル「オンラインカジノ “人間操作”の正体」から(放送日を加工して消しています)【NHKプラス見逃】(配信 27(日)まで)、【再放送】NHK総合にて4/24(木)午前0時35分(水曜深夜)

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以前、このレターでも書いたように、わたし自身がお酒の問題を抱えていたこともあり依存症は自分事。ジャンルは異なれど「ギャンブル依存症」にも関心を持たずにいられないので、家族会などにときどきお邪魔して勉強させてもらったりしています。

そんななかで、昭和や平成の頃のギャンブルの代表だったパチンコや競馬、競輪といったものから、ここ最近の主戦場は「オンラインカジノ」だと見聞きしていました。
現在「やめ続けている」依存症の当事者の方や、大変な思いをなさってご自身も傷ついたご家族の方々からも体験談を聞いてきました。

でも、この番組で初めて、オンラインカジノが「意図的に人間を依存症にデザインする仕組み」で運営されている知ったんです。それも「(元)オンラインカジノ運営者」の口から明かされるという、これ以上ない真実として。
金儲けのために、人を病気にする。人生を壊して、家族をめちゃくちゃにして、当事者も家族も命さえ落としている人も少なくありません。それが意図的に仕組まれていたなんて……。言葉で言い足りないほど衝撃を受けました。
また、あまりに巧妙で、これは逃げられない。病気にさせられる、のだなとはっきり突きつけられて、化学兵器のように恐ろしい存在だと感じました。

改めてですが、スマホから、スポーツベットなどのオンラインギャンブルのサイトに気軽にアクセスする、なんてことがいまめちゃくちゃ増えて問題になっています。特にスマホ慣れした若い世代にも急速に広がっています。

日本ではこのオンラインカジノは違法です(グレーゾーンとかありません。完全にブラックです)。でも、イギリスをはじめ海外では合法な国もあります。そのため、その国が運営しているカジノは「違法ではない」と信じこんで、足を踏み入れる人が少なくない。「知らないから」という無知による残念な結果なんです。

最初はまあ、よくわかんないままゲーム感覚で「遊ぶ」ようになる。気分転換とか、ちょっとしたお楽しみ程度で。そういうのってあるかもしれない。わかる気がします。
そんな人って別に賭け事が大好きとかではない。ちょっとした刺激でぱぱっと気分を変えようって、お遊びです。人生に「賭け事」なんてたいそうにいうような要素がほとんどなかったような人。
だからこそ、本当に、なにも考えずにふわっとした気分で遊ぶんだとも思います(怖いとか、自分がハマるかもとか思ってたら、むしろ避けますよね)。

そんな「怖いとか思ったこともない」人が、初めてのオンラインカジノ体験で「思ってもなかったけど、勝った!(しかもわりと勝った!!!!)」らどうですか。わたしなら、もう一回くらいはやりたくなる。絶対にやりたいというより、「やったらまた良いことあるかな〜」くらいのユルい気持ちで。

そしたら、「え、また勝った!!!」。なんか、ラッキーじゃね。ていうか、わたしって向いてるのかも。いいかも〜〜〜。なんて思う、と思う(わたしなら絶対)。この時点でもまだハマってないけど、「自分のなかの楽しみごとリスト」に入れておこう〜ってくらいかもしれない。

ちょっと話がずれちゃうかもしれないけど(すみません)。

わたしは基本的に本は紙で読むけど、漫画はスマホで読むことが多く、さらにいうと、ちょっとしんどいな、なんか気分変えて夢中で読めるものないかな〜なんて探していて、そういう作品に出会うと、すごい勢いで課金することがあって、そんときはもう「課金について考えない」ように思考停止します。

最初は、300ポイント(円)とかせこく購入するけど、だんだん面倒な気持ちと、大きく使いたい気持ちで(それでも3000ポイントとかだけど)ぽいっとクリックしちゃう。思い切って買う方が気持ちが良いってあるよなあ。

いまは『アンメット』をマガポケでカキーンカキーンと鳴らしながら、夜な夜な読んでいます。こないだ、睡眠導入剤を飲んだあとなのに布団のなかで読み始めたら夢中になりすぎて、眠気がきているのに続きが読みたくて、眠気と戦った挙げ句寝られなくなってしまい、減っていたお薬を増量して(ぎりぎり範囲で)飲んだことがあって、すごいダメな自分に嫌な気持ちがしました。バカな自分に対する自責というか罪悪感。案の定、悪夢を見て朝方うなされてしまった……。

オンラインカジノの話に戻ります。そんなふうに 人間って理性とか、頭で理解していることと、行動がバラバラになるというか、整合性がつかないようなわけわかんないところってある。
そういうのはもともとの生物としての人間だから、みんな大なり小なりあるように思うんです。

でもオンラインカジノは、人を「依存症にする仕組み」を作って、病気(精神疾患)になるようにデザインしているのです(と昨夜知って動揺しています)。

オンラインカジノの運営者は、スマホによって「行動を監視」し、「プロファイリング」し、ギャンブル依存になるように「刺激を与える」ことで、本来であれば「依存症にならないような人でも依存症にさせられる」仕組みを「デザイン」しているというのです。

番組では、「デザイン」の3つのポイントをこんなふうにまとめていました。

【監視】
スマホを通じて、サイトにアクセスする頻度、プレー時間のみならず、日々の行動をリアルタイムで監視(モニタリング)し、プロファイリング(個人の属性や行動に関する情報を分析し、嗜好、性格、能力などを推測)する。 その蓄積から「仮想人格」をつくり、未来の行動を予測する。
※その人の住所、家族構成、ローンを組んでいるかどうかなんてことまでデータ蓄積される

【分類】
プラチナとかゴールドといったふうに、客を「ランクづけ」する。ランクは負けた(使った)金額が増えるほどグレードアップする。負ければ負けるほど(つぎ込むほど)「良い客」としてランクづけられる。

【操作】
「良い客」には負けたあとに「ボーナスを出す」などして、タイミング良く勝たせる。いわば「ハッピー・ピル(幸せ薬)」を与えるように、「自分はこのサイトに好かれているんじゃないか」と特別感を演出する。そんな「人間操作」のなかで本来なら依存症にならないような人さえ「オンラインカジノ漬け」になってしまう。

こ、怖すぎじゃないですか……。

「負けてばかりで楽しくないな」なんて思うと、誰でもやらなくなっちゃうものです。でも「負けることはあっても、なぜか良いことがある。良い気分になれる」なんて思っちゃうとやめられない。
でもその「なぜか」には理由がある。繰り返し、そう思わせるように巧妙に仕組まれているからなんです。それが脳の「報酬系」に作用して、もう自分でコントロールできなくなる。

ギャンブル依存のメカニズムについて(久里浜医療センターHPより)
ギャンブルをなかなか止められない、しばらく止めていても久しぶりにすると止められなくなる。これには、脳内のいわゆる報酬系などの機能異常が原因と考えられています。
脳内には、「脳内報酬系」と呼ばれる部位があります。我々が感じる、気持ちよさ、ワクワク感、多幸感などは、この部位が働いて生まれます。ギャンブルも、やり始めの頃に大儲けした時など、この部位が強く反応して、ドーパミンという快楽物質が大量に作られ、放出されます。

ただのギャンブル好きとかのレベルから、「やめられなくなる」という依存症になる早さが、オンラインカジノの場合はめちゃくちゃ早いのも恐ろしい特徴だといわれています。

人が人を病気にすることを「デザインする」という表現が、言いようがなく恐ろしい。「(オンラインカジノは)現在の麻薬」と口にされた言葉にも、強くショックを受けました。わかる気がするから。

その麻薬のような「依存性の高いもの」に、四六時中アクセスできるスマホが、わたしを含めて誰の手にもあるという事実。冷蔵庫を開けるより気軽に触っているスマホ。わたしは自分がもしオンカジにハマってしまい、同時に「やめたいと思うようになった」とき、やめられる気がまったくしません。

番組には、ギャンブル依存症問題の支援者である田中紀子さん、そして息子さんが依存症になってしまった大橋さん(お母さま)が取材に協力されていました。大橋さんの息子さんは現在進行形でこの問題の渦中にあります。ご本人の悔しさ、無念さ、家族のやり切れなさ、かなしさ……言葉になりません。顔出しで取材を受けられたのは、他の誰かを助けたいと思われたからだろうとも想像します。

詳しくは番組を見てほしいのですが、息子さんがこの放送を見られていたらと勝手に願います。わたしもそうだけど、オンラインカジノのギャンブル依存症になったのは、本人のせいじゃない、むしろ被害者なんだとわかるから、誰も当事者を責める人はいません。本当に「被害者」なんだと強く……。

番組でもギャンブル依存症回復施設「グレイス・ロード」が登場しましたが、依存症になっても治療が可能です。依存症の治療はギャンブルに限らず一人では難しい。孤立こそ、依存症がもっとも好むものだから。信頼できる仲間とつながることで「やめ続ける」という選択ができるようになります。わたし自身、アルコールをやめられ続けているのは「仲間がいるから」「信頼する人間関係があるから」なんじゃないかと思います(このレターもその一つです)。
家族や身近な人で悩んでいる人がいたら、依存症の支援団体や依存症専門病院(前述の久里浜医療センターもそうです)などに相談してみてください。
オンラインカジノは違法ですが、支援団体や病院では「自分はギャンブル依存症なんじゃないか」「家族がそうなんじゃないか」と相談しにきた人を警察に突き出すということはありません。そこは安心してください。

わたしも信頼している団体です↓
ギャンブル依存症問題を考える会

いや、でも相談ってむずかしいですよね。電話とか問い合わせとか、オンライン相談会もあります。最初はなにかアクセスするだけでも十分だと思います。

※当事者の方は「当事者支援部」があります。こちらをのぞいてみてください。家族の方は「家族会」につながってください。

この「ギャンブル依存症問題を考える会」の代表であり、Nスペでも取材を受けていた田中紀子さんの記事をはじめ「Addiction Report」(依存症専門オンラインメディア)にはオンラインカジノ関連の記事がたくさんあるので、あわせてお読みください。
ふたつオンカジ関連の記事を添えます↓

●衝撃!警察庁発表オンラインカジノの実態 10代の6割以上が借金を抱える事態に
※インフルエンサーがオンカジの入り口になっていたりするケースもあり、わたしも法規制が必要だと強く感じています。

あと、家族や友人のあの人、もしかしたらギャンブル依存かも……と悩んでいる人がいたら、立ち読みでもいいからちらっと見てほしいのは『《改訂版》家族のための「ギャンブル問題 完全対応マニュアル」』(田中紀子著/ASK)です(本当にこれ以上のバイブルはないと思います)。

わたしもここ数年、大学で学生と関わるなかで、スマホが彼らの生活とどれほど密接に関係があるかリアルに感じるようになりました。直接関わっている学生から、オンラインカジノにダイレクトに結びつく話はまだ聞いたことがないけれど、「近いところにいる」とは感じます。すぐそこにあるってこと。

こうしたシステムというか、仕組みやからくりを知っているだけでやっぱり違うと思うんです。自分を守ることもできるし、依存症になった友達を責めないってことだけでもできるかもしれない。スマホをもってるわたしたち、誰ひとり他人事じゃない。本当に切実に感じています。

※写真は放送日部分を加工して消しています

※写真は放送日部分を加工して消しています

==番組公式サイトより==
オンラインカジノ “人間操作”の正体
(初回放送日:2025年4月20日)

「“人間操作”ですよ。あの恐ろしいモノを開発したのはこの私です―」。インターネット上の違法ギャンブル「オンラインカジノ」。関係者のひとりが内実を明かした。 取材班は3年にわたり、その謎に包まれた運営組織を追跡。浮かび上がってきたのは、日本人を狙い、利用者のスマホから様々な個人情報を収集、自分の意志ではやめられなくなる状態へと追い込む仕組みだった。 オンラインカジノの真の恐ろしさに、調査報道で迫る。

【NHKプラス見逃】配信 4/27(日)まで

【再放送】NHK総合にて4/24(木)午前0時35分※水曜深夜

お読みいただきありがとうございました。こうして感じたことを皆さんと共有させてもらえてありがたいです。知ることからしか、やっぱり始まらないと思うのです。
また次回のレターでお会いできますように。

(おわり)

   

  
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【お知らせ2つ】

●「ゲンナイ会」5月のこと
『元気じゃないけど、悪くない』というフレーズが気になった人が話を聞き合う読書会のようなおしゃべり会のような。月に1度、神戸で開催しています。5月の受付中です(あと3名ほどの受付が可能です)。

●マンツーマンの「話を聞きます」のこと
一対一でお話を聞く、インタビューセッションのような場を開いています。大学の授業がない時期(2〜8月頃)だけの開催です。ご興味ある方はこちらをご覧ください。

以上です。

わたし自身のアルコール依存について書いた著書はこちら。リハビリ記録のようにもなっています。『元気じゃないけど、悪くない』(ミシマ社)

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