「全国ギャンブル依存症家族の会」の特別セミナーで、「持っている資源を活用する」アイデアに希望をもらった話
昨日(日曜)の神戸は、午前中はじっとり湿気むんむんに曇っていたのだけれど、午後になるときつめの日射しが戻ってきたり、よくわからないお天気で、気圧も変動していたのか、なんだか終日気怠いような感触でした。
皆さんは気圧にやられていませんでしょうか。「圧」ってラスボスみたいにずしりと重くて、時々、負けそうな青山です。
とはいえ、2年前に更年期の治療としてHRT(ホルモン補充治療)を始めてから、日常の小さな不調がずいぶんとましになり、さらにはキックボクシングのフィットネスジムにも通うようになると、「低め不安定」から「低め安定」に変化して、気圧もそこまでプレッシャーを与えられなくもなっています。
やっぱ、身体的なアプローチって大事だな〜、なんて実感していたものの、少し前のレターでお話ししたように、定期的に通うジムはいったん卒業して、そしたら想像どおりに運動しなくなっちゃって。
というのも6月の前半も中盤も超忙しくて、主に座りっぱなしの毎日だったからでしょうか。今年の梅雨は、雨量が少ないから舐めていたのかもしれません。姿を現さずとも、やはり梅雨前線は「ここにおるで」と威圧感をかけてくるこの季節。
なんか、だりぃー。
いや、めっちゃだりぃぃーーー。
だるすぎぃぃーーー。
という日曜だった気がします(ひと言、だるい)。
昨日は東京都議会選挙もあったから、他府県住民だけど、どこか落ち着かない気持ちもありました。
スマホでSNSをのぞけば、ミサイルが飛んだりして、ありえないような、言葉を失うような世界情勢。
同じ世界で生きるわたしなのに、なにもできないような無力感もずしん。気分が暗く沈んでもしまう。ああ、ほんとに暗澹たる気持ち。
そうか、これは「心がやや落ちている」のかな。でもやっぱ気圧とか、運動不足とかもやっぱりあって……。どっちもやな。しゃーない。そんな低め不安定な今週のレター。読むのもうっとうしくてごめんなさいねええええ。
でもその前日(先週末の土曜)は、むしろ久しぶりに胸がぼうぼう熱くなったりしていたわたしなのです。そんな話にお付き合いください。
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お酒の問題を抱え(若い頃は『ほんのちょっと当事者』に書いたようにクレジットカードやお金の問題を抱え)いろんな方面の「アディクション」が自分事でもあるわたし。
このレターでも何度も書いているように、自分にとってダイレクトではないけれど、「ギャンブル依存」についても他人事とは思えず、ときどき「全国ギャンブル依存症家族の会」の集まりに参加させてもらって、いろんな意味で「自分を助ける」機会やヒントをいただいています。
先週末21(土)は、神戸のポートアイランドにある神戸学院大学のキャンパスで特別セミナーが開催されると知り、いつもそうだけど事前申込み不要(かつ無料)なので、朝から手ぶらでいそいそお話を聞きに行ってきたのでした。

その日のセミナーの案内(もう終了しています)。こうした家族会は全国各地で毎月開催されています。依存症に関心のある方はわたしのようにのぞいてみてくださいね

21日の「ギャンブル依存症等特別セミナー」が開催されたのは、神戸学院大学ポートアイランドキャンパス。初めてお邪魔しましたが、西海岸みたいな素敵なロケーションと学舎でした
2時間あるセミナー前半は、ギャンブル依存の当事者の方、ご家族でもある「ナース部」の方からの活動報告&体験談。
いやあ、切実で赤裸々ですごくしみる話ばかり。だけど、びっくりするほど明るくて、笑いの要素まで挟まっていて、会場からも「わははは」と笑い声がしょっちゅう上がりました。なぜそんなことが可能なのか。絶妙なトークのレベルの高さに驚いてしまうほど。
その笑い声に感じるのは、うんうん、と仲間同士がハグするような「共感」のようなもの。その場で共有されている、あたたかさに包み込まれるようなよき感触。わたし自身にも、依存症の当事者として家族として、そんな話が届いてくるので、励まされるようなゆるされるような気持ちになって、話を聞くだけで心がしっとりしていったのです。ありがたい……。
さて後半。
壇上にはギャンブル依存症治療の第一線におられる3人の先生が立ち、始まったのは侃々諤々のトークセッションでした。 それがですね、かしこまった「啓発セミナー」の講演とかじゃなくて、「なんかのエンタメの舞台ですか!?」と突っ込みたくなるような、話芸が炸裂する、乱暴な言い方ですが、めちゃめちゃおもしろい即興劇のような。

(右から)東京「昭和医科大学附属烏山病院」の常岡俊昭先生、名古屋「一ツ山クリニック」の古川優樹先生、福岡「のぞえ総合心療病院」の堀川智史先生
3人の先生はそれぞれ個性的で、知識も経験も豊富なのがびしばし伝わってきて、わたしは途中から前のめりになり、いっぺんに3人のファンになってしまいました。
トークセッションは「事前に寄せられた家族や当事者からの疑問、質問、要望」をもとに構成されていたのも独創的。
会の主催者である「ギャンルブル依存症問題を考える会」の代表・田中紀子さんや、会場を埋め尽くす家族や当事者の方との信頼関係や関わりの深さがあるから実現するのだと思うけど、あまり医者が言いたがらないような治療者側の本音も率直に話されて、話が全然通り一遍じゃない。
参加者から寄せられた声はすごくリアルで直球で、時に先生方には「厳しい」ものでもあったと思う。だけど、みんなでその場で頭をひねり、問題解決を考える瞬間に「新しいアイデアが生まれる」ということを、目の前で見ているような。すごかったです。脳みそがめちゃシェイクされもしました。
事前質問とは別に、会場からも次々と質問の手が上がる。その質問がまた、めちゃくちゃシャープで切れ味のいい手裏剣みたいな声ばかりで、舞台上の先生方が、「うっ」と刺さってたじろぎつつ、これ以上なく真剣に考えこんだり、むしろ制度上やシステム上「できない」ことを正直に吐露してくれたり。
「建設的な話し合い」って言葉が、まったくノー建設的に行われている場が多い昨今(兵庫県も)、こんなクリエイティブな場もないぞってくらい、活気と熱意に溢れる場と時間でした。
それを生で目にしていて、感動というか、ふるふる胸が熱くなっていたわたしです。
後半の中盤から壇上に上がった田中紀子さんが、いつもそうであるように、とにかくモタモタする暇なし。間髪入れずにどんどん展開する超スピーディーな進行なので、ついていくのも必死に聞き入っていたら、後半も秒で終わってました。

立ち見が出るほどびっしり満席。376名の参加だったそうです
本当に勉強になったなあ。課題もたくさんもらえたなあ。
わたしが特に印象に残った話題の一つに、「あるもの(資源)をもっと利用する」という話がありました。
保険制度のシステム上で運営される医療機関では、良いアイデアがあっても、人的なものや、制度上の縛りがあって、なんでも簡単に採り入れられない。人の健康、命にかかわる医療の現場なので、「試してだめだったら、それでいいじゃんとは」やっぱりなかなかいかないだろうとも。当然だ。
新たな取り組みやプログラムをつくるのは、ある意味、お役所的なプロセスを踏まなくてはいけないだろうし、なかなか難しいことも想像できます。縦割りの組織だから。
そこで、回復を支援するプロセスでのアイデアが出ました。
民間企業だと、例えば「ここの部分は専門業者に外注」とかするみたいに、依存症の回復のプロセスも役割分担できるんじゃないか、と。家族会や当事者の会は、自助グループとしてそういう実践を重ねて、実績もつくってきています。
「わたしたちを、もっと使ってほしい。特に自助グループ的なパートで」
「せめて、つなげてほしい」
家族会や当事者にいる回復の経験者たちが、緊急時も、長期的にも対応できるようなシステムが構築されていて、それはすごい資源なんですよね(少し関わってわたしが最初に驚いたのもそのことでした。信頼できる組織力にも驚くばかり)。
トークセッションで登壇された3人の先生方は、すでにそれぞれがいわば「外部」となる支援機関とも連携しているようで、だからこそ、この日のトークセッションも実現しているわけだけど。
逆にいうと、本当に限られた医療機関でしか、そうした連携は起きていない(ということを改めて知りました)ともいえる現状なんです。
例えば、わたしが暮らしている兵庫県、お隣の大阪府にもギャンブル依存症の専門治療病院はない(知らなかった……)。つまり、困ったときに駆けこんで、治療計画をざっと提案してくれて、ひとまず安心させてもらえるような場所がないということ。今は他府県の病院を頼っているそうです。
アルコール依存症の専門病院はある(わたしも知ってる)。もちろんアルコール依存の現場でも関わる人たちが、時間をかけて、そういうシステムや環境をつくってきたんだと思う。
でも、ギャンブル依存症も待ったなしの状況です。
近年、特にコロナ以降は状況ががらりと変わった。昭和とか平成の時代のようにパチンコ、競馬とかで何年もかけて借金をつくる、とかではなくなっている。前にもレターで書いたように、オンラインカジノは依存症になるのも早いし(脳が変化して)、問題となるお金の額も、桁違いにとんでもないことになる。
依存症となる人の若年化の問題もますます深刻化している。大学生はもちろん、高校生だってスマホでオンカジ漬けになり、ブラックバイトで犯罪に手を染めてしまうようなこともよくニュースで見ますよね。胸が痛い……。
依存症は、身体的な疾患と同様に、短期間で緊急事態に陥る病気なんですよね。なのに、緊急対応できる病院が、住んでいる街にないなんて。
人口が急激に減り少子高齢化が加速する日本では、依存症に限らず、ただでさえ縮小傾向がある医療の現場(今後、ますます病院数も医師の数も減ることが予測されている)。そんななかで、乱暴な言い方をすると医療機関側にとって「あまりお金にならない依存症」に力を入れる病院が増えるとはわたしには思えない。
それはしょうがないのかもしれない。経済合理的な資本主義の社会だから。
だけど、むしろ信頼できる支援団体と連携することは、病院にとって効率が良いのではないでしょうか。病院ですべてやらなくても、いわば「外注」できるのだから。病院で抱え込まなくても、解決できる問題が出てくるのではないか。
という提案が、そのトークセッションの重要な議題として何度も挙がっていました。
全国のかなりの都道府県にすでにある「家族会」といった組織、自助グループである共同体との連携は、依存症の回復に対して、想像以上に強い資源になるはずだ、と。
もちろんいまも、すでにそうした連携が行われているところもあるわけだし。
病院でしかできない医療的な治療もあるけれど、依存症は短期間で完治するわけではない。回復とはやめ続けること、みたいな長期的回復プロセスが必要な依存症だから、急性期、回復期と場の役割分担をしていけばいいんだよなあ。
そんな単純には進まないとも想像しつつ、そんなアイデアが現場の医療者と支援者がこうして活発に議論しているのを聞くだけでも、本当に希望が湧きました。
わたし個人の雑な考えですが、医療機関のしょうもないプライドや(ごめんなさい)、「なにかあったときに誰が責任をおうのか」みたいなところ(当然ありますよね、大事なことです)で、「面倒だからやめておこう」となる医療機関も多いだろうとは思う。
でも、オンカジがこれだけ社会問題化している現状、そんな悠長なこと言ってる段階でもない。自ら命を絶つ人も増えている。命にかかわることなんだから……。とにかくできることをやっていっても、間に合わないような状況。
希望と同時に、厳しい現状も突きつけられて、胸が潰れそうに痛みます。
さて、会場ではいつも神戸で仲良くしてもらっている方や、東京をはじめ遠方からもたくさんの会の方がお越しで、わたし個人的に久しぶりにお会いできた方もいて、終わってから少し話ができたり、なんだかパワーをお裾わけいただいたような。 本当にいつもありがとうございます。
政治家の方も何人も参加しておられましたが、力を見せて欲しい(政治的な)。
わたしも市井でほんとうに微力ながら、できることをやっていきたい。誰かのために。同時に自分のために。
そんなふうに思うと、自分のどころからか、ぽっぽっと力が湧くような感触があり、それはわたし自身をたった今も助けてくれる。こういう活動は、なにかに参加するってことは、どこまでも自分のためでもあるんだなと思う(結果的にだけど)。
今週もレターをお読みいただきありがとうございました。
来週は、第5月曜なので、レターはお休みです。7月にまたお会いできますように〜。
(おわり)
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【お知らせ2つ】
●7月「ゲンナイ会 in 舫書店さん」のお知らせ
毎月、神戸元町の山手で開催している「ゲンナイ会」ですが、7月は神戸の西の塩屋にある「舫書店(もやいしょてん)」さんで、コラボ開催させていただくことになりました。7/26(土)朝の開催です。以前、このレターでも紹介したことのあるとっても素敵な本屋さんです。少人数の開催なので、話すのが苦手な方もご安心ください。詳細はnoteにて(受付・申込みは舫書店さんです)。

塩屋駅からすぐの「海角」一階奥が「舫書店」さんです。海沿いの街、塩屋の散策がてらどうぞ〜
●マンツーマンの「話を聞きます」7月受付のこと
一対一でお話を聞く、インタビューセッションのような場を開いています。大学の授業がない時期(8月まで)の開催です。ご興味ある方はこちらをご覧ください。
●選挙ウォッチャーちだいさんのクラファンのこと
「スラップ裁判」にNOと意思表示するクラウドファンディングが開催されています。わたしはちだいさんを一方的に知っているだけで、実はYouTubeも追いかけたりしていないのですが、少し前に兵庫県民集会に参加した際にお話を聞いて「信頼できる人」と確信して、県民として恩義を感じています。
このクラファンは「スラップ裁判」にかかる弁護士費用などを募る目的だそうです。2週間限定で、金額も少しから参加できるのですが、始まってまだ1週間も経っていないのに3000人を超える人が応援していて、励まされています。こういうのが「連帯」なのかなと思ったり。参加してくださいという訳ではありません(十分に金額も集まっているようですし)。同じ方向を見ている人に、知ってもらえたらいいなというお知らせまで。
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